こちらのワークショップは、専門家向けの4つのワークショップ、および「アゴラ」から参加ワークショップを選択してください。
専門家向けワークショップ
精神看護における抑うつとトラウマへの介入理論と技法ー卓越した看護実践のためにー
講師 宇佐美 しおり(熊本大学大学院生命科学研究部)
小谷 英文(IADP理事長・PAS心理教育研究所)
【目的】近年、総合病院においては、在院日数が短くなり、悪性腫瘍、血液疾患、脳血管性疾患、心疾患を持ちながらも早期に退院し地域で生活をする患者が増え、また精神科病院においてはうつ病とともに過去のトラウマを抱えながら闘病生活を送る患者が増えてきている。今回、身体疾患を持ちうつ病や不安障害を持つ患者、気分障害で多くのトラウマを有する患者に対する精神看護の介入技法、特にオレムーアンダーウッドのセルフケア理論とPAS理論(精神分析的システムズアプローチ)を用いた介入に焦点を当て、患者のセルフケアや回復をどう促進していけるのか、について検討を行うこととした。
【内容】セルフケアに関する理論とPAS理論を用いた介入技法を事例、演習を通じてトレーニングする。
【形式】講義、事例検討、ロールプレイ
【対象】精神看護に従事するもしくは関心のある看護師、看護管理者、精神看護専門看護師(CNS)を対象とする。
災害急性期から中期の子どものアセスメントと介入
講師 足立 智昭(宮城学院女子大学発達科学研究所)
本ワークショップにおいては、大規模災害の発生から2か月の急性期、およびそれ以降のおよそ1年間の災害中期の子どものアセスメントの視点について解説し、災害急性期以降の子どもへの介入のあり方について具体的に紹介する。一つは、一人ひとりの子どもを対象とする遊戯療法、もう一つは、集団を対象とする遊戯療法である。これらの遊戯療法は、東日本大震災において実際に被災地で活躍した佐藤葉子氏、および大原慎氏によってワークショップ形式で紹介される。災害発生後のトラウマを抱えた子どもの支援に関心のある方を対象としたい。
【対象】臨床発達心理士、臨床心理士、保育士、教員、ソーシャルワーカー
うずくまった虎、潜む龍、集団精神療法における青年との作業
講師 セス・アロンソン(ウィリアム・アランソン・ホワイト研究所)
青年期は、生物学的にも心理学的にも大きな変化の時期です。青年期は、家族と別れ、新しい愛着を形成し、認知的変化と情緒的変化の折り合いをつけ、アイデンティティを練り上げることを学ばなければなりません。グループプロセスは青年たちがこれらの変化と新しい能力を探究できる安全空間を提供します。特にピアグループは若者特有のエネルギーである情熱を治療的前進にうまく利用することを可能にします。参加者はこのワークショップで青年期年齢層の発達課題を学び、青年期グループの設定と実践の基礎を学ぶことができます。
【対象】学会参加者のみ
※ このワークショップには当日通訳がつきます
応答構成入門
講師 能 幸夫(PAS心理教育研究所・湘南病院相談室)
伊藤 裕子(PAS心理教育研究所)
橋本 麻耶(PAS心理教育研究所)
応答構成とは、クライエントの発言に対するわれわれ臨床家の応答を、時間を止めて、応答ができあがるプロセスを吟味していく訓練です。心理療法・カウンセリングおよび精神看護といった臨床家の訓練は、つねに応答構成に始まり応答構成に終わるともいえます。私たちがふだん無意識のうちに応答しているそこにも、この応答プロセスはあります。応答を作り上げていく瞬間には、どのような営みと冒険があるのでしょうか。自分の応答能力を広げていくために、PAS理論のエッセンスが詰まったこの応答構成訓練をともに体験してみましょう。
【対象】学会参加者のみ
【定員】10名内外
アゴラ—災害PTSDを越える心理療法コミュニティー—
呼びかけ人:
橋本 和典(国際基督教大学 准教授 福島復興心理・教育臨床センター代表)
梶谷 真司(東京大学大学院 教授 UTCPセンター長)
高田 毅(国際基督教大学高等臨床心理学研究所助手 福島復興心理・教育臨床センター臨床スタッフ)
「アゴラ」とは、2008年のIADP松江大会で、紛争やテロが続くグローバル社会における孤立と人間性の喪失危機を越えるグループセラピィとして初めて行われ、大きな反響を得た。2011年3月11日の東日本大震災後は、2012年の仙台大会、2013年の郡山大会とつないできている。今回のアゴラは、IADPがバックアップを続ける福島復興心理・教育臨床センターの「心理療法コミュニティー」を市民・専門家向けワークショップとして公開するものである。「心理療法コミュニティー」とは、災害後には誰しも恩恵を受けることができる災害心理療法、あるいはその専門家に親しみながら、心が広がり、元気になり、確かな知識を得ることができる心理教育プログラムと噛み合わせて、見えにくく隠れた災害PTSDの予防や治癒を果たすためのコミュニティ・ビルディングアプローチである。東日本大震災、熊本地震、これまでのあらゆる天災・人災のメガ災害の当事者・関係者、災害PTSDに関心のある市民の方、専門家、知識人の参加を呼びかけ、PTSD予防と治癒のエッセンスを体験的につかむことを目的とする。
【定員】30名
予定ワークショップとリーダー
○「身体感覚覚醒のための発声練習」
リーダー:高田 毅
ストレスの反応に回避や麻痺が含まれるため、慢性化すると、ストレスの自覚が難しくなります。そういうときに、症状化や行動化の形でバランスをとることになります。本プログラムは、発声練習を通して、身体感覚を安全に覚醒、覚知することを目的としています。自らのストレスを確認し、セルフケアの基本となる自我のフィードバック機能を高めましょう。
○「哲学対話」
リーダー:梶谷 真司
対話型の哲学とは「共に問い、考え、語り、聞くこと」です。自分たちが考えたい問題について、お互いを否定することなく、自由に語り、問いあうことで一緒に思考を深めていきます。それはお互いを承認し合い、自分とは異なる他者を受けいれ、自分自身を深く理解し受け止めるプロセスでもあります。哲学対話において、考えることを通して自由になる感覚を体験しましょう。
○「パンドラグループ」
リーダー:橋本 和典
「パンドラグループ」とは、心理療法家と作る安全な集団で、普段言いにくい心の底にある思い、感情を思う存分言葉にして心の元気を高めるための、災害中長期のPTSDトリートメントのための集団精神療法です。パンドラの箱をあけ、心の重荷を解放しましょう。そこに本物の希望の力が見えてくるでしょう。