呼びかけ人
小谷 英文
(IADP理事長/国際基督教大学 教授/国際基督教大学高等臨床心理学研究所 所長・東日本大震災特別 支援チーム リーダー)
ボニー・ブークリー
(国際集団精神療法・集団過程学会 理事/元アメリカ集団精神療法学会 会長・9.11アメリカ同時多発テロ事件 災害支援特別委員会 委員長)
足立 智昭
(宮城学院女子大学 教授/宮城学院女子大学 発達科学研究所 所長/震災復興 心理・教育臨床センター 代表)
われわれの活動
2011年3月11日の東日本大震災以来、われわれは、外傷(心の傷)の克服を助け、さらなる心の柔軟性を育て鍛える力動的心理療法(ダイナミックサイコセラピィ)の立場から、被災者支援、および被災地の先生方や、対人援助専門家の様々な支援に当たってきました。今年9月には、国際基督教大学、宮城学院女子大学、熊本大学で連携して、宮城学院女子大学内に心理・発達臨床、精神看護領域の、「震災復興心理教育・臨床センター(http://ejcenter.wordpress.com/)」を立ち上げ、被災者の心の日常的なケアを始めました。また、センターの多くのスタッフが属する国際力動的心理療法研究会も被災者支援、専門家支援をはじめました。
災害とメンタルヘルス
震災から9か月が経ち、被災地の復興の速度はばらつきが目立ち、被災後の心理的反応にも多様性と深刻さを増してきています。未だ続く余震、原発事故による放射能への懸念により、本来ならばすぐに収束するはずの急性ストレス反応が継続し、気持ちも体も休まらない状態が続いています。また、震災による強いストレス反応が固定化した外傷後ストレス反応の慢性化(PTSD)も見られるようになってきました。その対策は、未だ目処が立っているとは言えない状況にあり、長期にわたる心の安全確保の闘いが強いられています。
外傷(心の傷)の影響は、目に見えぬゆえに、思わぬところで様々な影響を及ぼします。恐怖心、不安、地震酔いなどの地震に直結した敏感な反応は勿論のこと、震災前に比べて、体の疲れが取れなくなった、体の節々が痛む、血圧が高くなった、眠りが浅い、悪い夢を見る、たばこや飲酒が増えたなど、心身の不調を超えて、時に自己破壊的になってしまう重い実態を、様々な調査が浮き彫りにしています 。災害後の多大なストレス状態では、人が本来持っている、自分で自分の体と心を健全に創造的にマネージする心の司令塔・心のリーダーシップ力を見失う危険が必然的に伴います。一人一人がこれを見失うと、その周囲にある家族、職場、地域社会にも多くの負担がかかり、こちらも思わぬ組織崩壊の危機すら招くことがあります。
プレカンファレンスの目指すもの
われわれは、2012年度の国際力動的心理療法研究会年次大会を9月1日(土)〜3日(月)に仙台にて開催します。
そして、年次大会に先行して、2012年3月24日(土)、25日(日)に、IADP2012プレカンファレンスを仙台にて開催します。東日本大震災を体験した被災者、支援者の誰もが集い、記念日を契機に、一人一人の心のゆとりを取り戻し、痛みを癒し、新たな活力、リーダーシップを皆で高めようとする試みです。
2日間、講演を聞き、ディスカッションをし、その場で実際に活力を高めるプログラムによって、心理集団療法的体験を分かち合い、心のエネルギーを使うことと同時に蓄える術を学び合いましょう。未曾有の震災後のメンタルヘルス危機に対応できる専門家の力の必要性には、想像をはるかに越えたものがあります。支援に当たっているうちに多くの専門家も2次、3次被災者になります。そこでわれわれは、災害による心の傷(外傷)治療の国際的指導者であるBonnie J. Buchele博士を招待し、最新の知見、最新の実践手法を紹介していただくことで、被災者だけでなく我々専門家のリフレッシュを計ることにしました。
以下、3、4ページに、各プログラムの紹介、講演者・トレーナーからのメッセージをご紹介します。聞き慣れない言葉もあるでしょうが、各トレーナー・講演者の熱をお受け取りください。
ぜひご参加ください。そして、共に心の活力、リーダーシップを取り戻しましょう。